老後の住み替え、認知症になってからでは遅い?——判断能力が低下する前に決めておくこと

認知症発症後は住み替え契約が難しくなることも。成年後見制度・家族信託との関係と事前準備を解説します。

認知症になると住み替え契約が難しくなる理由

不動産の売買契約や施設への入居契約は、本人に「契約内容を理解し判断する能力」があることが前提です。認知症が進行して判断能力が低下すると、本人単独では有効な契約を結べなくなり、家族が代わりに手続きしようとしても委任状だけでは対応できないケースが多くなります。結果として、住み替えたくても契約自体が進められず、自宅に住み続けるほかない状況に陥ることがあります。

成年後見制度とは

判断能力が低下した後に利用できるのが「法定後見制度」です。家庭裁判所が選任した後見人が本人に代わって契約行為を行いますが、以下のような制約があります。

  • 家庭裁判所への申立てから後見人選任まで数ヶ月かかる
  • 後見人は「本人の利益」を最優先するため、家族の希望通りに施設や物件を選べるとは限らない
  • 自宅の売却には家庭裁判所の許可が別途必要になる場合がある

一方、判断能力があるうちに契約しておく「任意後見制度」なら、将来の後見人や委任内容を本人の意思であらかじめ決めておけます。

判断能力が低下する前にできる準備

  • 住み替え先の希望を家族と共有しておく:施設のタイプ、エリア、予算感を元気なうちに話し合う
  • 任意後見契約を結んでおく:信頼できる家族や専門家と将来の代理権の範囲を取り決める
  • 財産目録を作成しておく:自宅の評価額や預貯金、年金額を把握し、住み替え資金の計画を立てやすくする

家族信託という選択肢

成年後見制度より柔軟に財産管理をしたい場合は「家族信託」も選択肢になります。本人が元気なうちに、自宅などの財産の管理・処分権限を家族に託しておく仕組みで、家庭裁判所の許可を都度得る必要がなく、本人の意向に沿った売却や住み替えがしやすくなります。ただし契約設計には専門家(司法書士・弁護士)のサポートが実務上ほぼ必須です。

早めに住み替えを検討すべきサイン

  • 物忘れの頻度が増え、通院や服薬の管理に不安が出てきた
  • 火の消し忘れなど、自宅での生活に安全面の心配が出てきた
  • 「まだ大丈夫」と感じている今のうちに、家族で住み替えの話をしたい

まとめ

認知症が進行してからでは住み替えの選択肢が大きく狭まります。判断能力があるうちに家族で希望を共有し、任意後見契約や家族信託などの仕組みを検討しておくことが、本人の意思を尊重した住み替えを実現する近道です。

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